未完成の作品

芸術

映画「男はつらいよ」

男はつらいよ

渥美清主演の「男はつらいよ」シリーズは、昭和44年から平成7年まで48作品が上映された。

第42作

大学受験浪人である寅さんの甥っ子満男が、葛飾高校時代の後輩及川泉(高校2年生)を訪ねて東京から宮崎県までツーリングし、及川泉と縄文古跡群を訪ね、そこで寅さんと遭遇したり、満男と泉の心の交流を交わす場面が描かれていた。

第43作

及川泉の父親を訪ねて、満男と泉が東京から大分県まで列車を乗り継いで旅をし、2人で父親に会いに行き、寅さんと泉の母親も合流し旅館で酒宴をする物語であった。

第44作

泉が東京での就職のため面接に来たがうまくいかず、また泉の母親に再婚話が持ち上がり反発した泉が家出をする。泉を追いかけて鳥取砂丘まで来た満男が泉と会い、寅さんも交えて交流を深めた。

第45作

泉が友人の結婚式に招待され宮崎県まで来て、そこで寅さんと会い寅さんが足を怪我して動けなくなった。満男が宮崎県まで飛んで泉と会い、寅さんの看病をするというストーリーだった。

第48作

泉の結婚が決まり、結婚式当日満男が泉の結婚式をぶち壊して寅さんがいる沖縄に逃げた。泉も満男を追いかけて沖縄に来て満男を問い詰めた。満男は「愛してるから結婚式を邪魔した」と告白した。泉と満男はその後順調に愛を育んでいた。

満男と泉の恋がどうなるのか面白くなったところで、渥美清が肝臓ガンで死去して男はつらいよは打ち切りとなった。物語がどう展開するのか期待していたのであるが、思わぬ形で未完成のまま映画が終了してしまった。

夏目漱石著「明暗」

夏目漱石

津田

津田由雄は痔の治療を受けており、医者から手術が必要だ、と言われた。入院する前の日、妻お延から入院に必要な寝間着、タオルなどの準備をしてもらった。津田のためにお延が褞袍を仕立てており、丁度津田の体にフィットした。

津田は入院費用を京都の父親に借りるため手紙を書いていたが、父親から断りの手紙が来ていた。

入院当日、津田はお延と病院にやって来て入院した。お延は津田の身の回りの世話をしていたが、どこか上の空であった。お延の叔父岡本夫妻から芝居見物に誘われており、行こうかどうか思案していた。津田はお延に「折角だから行った方が良い」と送り出した。

芝居見物

お延と岡本夫妻、そして岡本夫妻の2人の娘の5人で芝居見物をした。芝居小屋には津田の職場の上司である吉川の妻も来ていた。お延は吉川夫人を好いてはいなかった。その後5人で食事をした。食事には三好という青年が同席した。この食事は岡本夫妻の長女継子と三好の見合いの意味があった。岡本夫妻はお延の直感を高く買っており、三好に対するお延の見立てを聞きたくて同席させた。お延は三好について「初対面であり人柄については分からない」と答えた。

友人小林

津田には小林という数年来の友人がおり、数日前に酒を飲み交わしていた。小林は物書きをしており、間もなく朝鮮に渡って新しい仕事をする予定であった。津田は小林に餞別として外套を呉れてやることにしていた。

津田が入院した次の日、小林が津田宅を訪問した。対応したお延に「津田から外套を貰うことになっている」と伝え、お延は箪笥の中から適当な外套を渡した。小林は「君たち夫婦は仲良く見えるが、津田は君に対して満足していない。君も津田から愛されようとして必要以上に力んでいる」とお延に告げた。お延は小林に対して反論したが、小林が帰った後顔を覆って泣いた。

お秀

津田の妹お秀が見舞いに来た。お秀は、津田が父親に金を無心して断られたことを知っており、入院費を用立てようとお金を懐に忍ばせていた。お秀が「入院費を用立てても良い」と言ったのに対して津田は、妹に家計の苦しい状況を見せたくなくて素直に受け取らずにいた。そこへお延が顔を出して「岡本の叔父から入院費を貰った」と言って小切手を出した。お秀は持ってきたお金を津田に押し付けて、怒って帰った。

津田とお延は、二人してお秀を打ち負かしたような気になり、二人の絆が深まったような気になっていた。

吉川夫人

吉川夫人が津田の見舞いに来た。お延を津田に引き合わせたのは吉川夫人であり、津田夫婦の縁結びの神であった。吉川夫人は、津田夫婦の間にある微妙な溝を憂慮しており、津田夫婦の問題を解決しなければならない、と思っていた。

吉川夫人は以前、津田に清子という女性を紹介しており、津田と清子は交際し結婚まで考えていたのであるが、突然交際を解消した経緯があった。津田の心には清子への未練が巣食っていて、それがお延との夫婦関係に影を落としている、と吉川夫人は考えていた。

吉川夫人は「清子が流産後の体調不良のため一人で温泉で湯治している」と津田に告げた。清子と会って積もる話をし、引き摺っているものを開放すべきだ、と諭した。津田は痔の治療も兼ねて湯治することを決めた。

湯治場

旅館に到着した津田は、中居から清子の情報を聞き、自然な形で会うことになるよう画策していた。津田が風呂から上がって階段を昇ろうとしたとき、階段を降りようとした清子と階段の上下で鉢合わせした。清子は顔を強張らせて棒立ちになり、走って部屋に戻る足音がした。

次の日、津田は中居に頼んで清子の部屋を訪ねて良いか取り次いで貰った。返事はOKだったので、清子の部屋へ向かった。清子は部屋で津田を待っていた。階段で会ったときと違って清子は冷静であった。久しぶりの挨拶を交わして二言三言会話した。

ここで明暗は終わっている。夏目漱石が死亡したためだ。面白くなったところで、この結末は誰にも分らない。明暗は未完成のまま終了してしまった。

シューベルト作曲「未完成交響曲」

フランツ・ペーター・シューベルト

オーストリアの作曲家フランツ・ペーター・シューベルトはモーツァルト、ベートーベンと同じ時代に活躍した作曲家である。モーツァルト、ベートーベンが華々しく活躍した陰で、シューベルトは地味な作曲家であった。1822年に作曲を開始した交響曲第8番は、シューベルトの死後37年経って楽譜が発見され、1865年に初演された。

第1楽章、第2楽章、第3楽章から成るが、第3楽章は途中までしか書かれておらず未完成である。演奏会では第1楽章、第2楽章のみ演奏される。交響曲第8番は未完成交響曲と称されている。未完成であるが、シューベルトの才能が存分に発揮された壮大な交響曲であり、ベートーベンやモーツァルトの交響曲と比べて同じ位頻繁に演奏されている。

タイトルとURLをコピーしました