青森県住宅供給公社巨額横領事件
青森県住宅供給公社
青森県住宅供給公社は住宅供給のため国が設立した公法人であり、
- 分譲住宅や宅地の譲渡
- 賃貸住宅の建設・管理
- 関連施設の整備
を目的としてまちづくりを推進していた。
経理担当主幹
青森県住宅供給公社の経理担当主幹Tは経理の責任者として職務に精励していたが、職場の殆どが青森県からの出向者であり、Tのようなプロッパーは部長止まりであることに不満を持っていた。
Tは1993年2月頃から公社のお金を横領していた。最初は少額のお金を横領して飲食や遊興にあてていたが、段々エスカレートして頻繁に高級クラブに通い一晩に数十万円の飲食をし、気に入ったホステスには一時に300万円や700万円もの現金、数百万円もする高価な貴金属を贈っていた。
チリ人ホステスとの出会い
1997年、Tは青森市内の外国人パブで飲食した際、チリ人ホステスA女と知り合い一目惚れして結婚した。Tが40歳、A女が29歳であった。青森市内で同居して結婚生活を送ったが、A女の故郷チリにも何度か旅行した。
A女と結婚してからTの横領額が多額となり、1回で数千万円もの金額を横領するようになった。横領したお金をA女に注ぎ込み、A女はチリにレストラン、病院、プール付き豪邸などを建てた。
横領の発覚
2001年、仙台国税局の税務調査がありTの横領が発覚した。横領回数は165回、横領金額総額は14億5,900万円に上っており、そのうち約11億円をA女に渡していた。
横領が発覚しそうになったときTは東京に逃げ、東京でも銀座などで豪遊していたが、高級クラブから出て来たところで青森県の捜査員に逮捕された。
裁判
2002年、青森地方裁判所での審理でTには懲役14年の判決が下され、山形刑務所で服役することとなった。
青森県住宅供給公社は民事裁判を起こし、Tに対して横領額全額の賠償請求すると共にTの監督上の上司22人に対しても損害賠償を請求した。この訴訟は9人の上司が1,850万円を支払うことで決着している。
また、A女に対してチリでの病院、レストラン、豪邸などの売却による賠償金の支払いを求めた訴訟は1億4,860万円の賠償金が支払われたが、弁護士費用、裁判費用を差し引いた残金は5,480万円であった。
2009年3月、青森県住宅供給公社は解散し債権は青森県に譲渡された。
長野県建設業厚生年金基金巨額横領事件
長野県建設業厚生年金基金
長野県建設業厚生年金基金は長野県の建設会社約600社の社員が掛けた毎月の厚生年金掛け金を資金としている。資金約300億円を証券会社などに預け、投資信託などに投資して運用益で厚生年金の支払いなどの業務を運用している。1980年代はバブル景気で資産の運用が好調で、厚生年金基金の営業収益も黒字続きであった。
バブル崩壊
1990年代に入りバブルが弾けて厚生年金基金の営業収益が赤字に転じ始めた。厚生年金基金の事務長代理であったSは赤字対策を理事らから迫られ、ストレスを抱える日々が続いた。
ストレスの発散としてクラブのお気に入りのホステスと乱痴気騒ぎをして鬱憤を晴らしていた。クラブに入り浸って飲食し、飲食代金が給料で間に合わなくなり借金をすることとなった。派手にクラブ通いをして借金をし、その借金を返すため別の金融会社から借金をする自転車操業となっていた。
横領開始
Sは厚生年金基金の大量の切手のストックの中から120円切手20枚を金券ショップに持ち込んで、額面2,400円の8割の1,920円の現金を手に入れた。これが横領の始まりである。その後、切手の換金や現金を横領して帳簿の辻褄を合わせて発覚を防ぐ工作をしていた。
投資ファンドの接待
2001年4月からSは厚生年金基金の事務長となった。東京の投資ファンド会社々長が資金運用を目的にSに接近して来た。社長はSを東京の高級料亭や高級クラブで接待し、自社への資金運用を懇願した。接待の度に現金も渡していた。社長は執拗にSを高級料亭や高級クラブで接待し、Sは高級クラブでの遊興に嵌まって行った。
Sは理事会で資金運用先として投資ファンド会社を推薦し採用された。投資ファンド会社は厚生年金基金の資金運用先のひとつとして厚生年金基金の資産を運用することとなった。
遊興三昧
厚生年金基金の営業収益は益々赤字が嵩むようになり、厚生年金の減額が決定された。各建設会社への説明は事務長であるSの役目となり、毎日建設会社の人達から突き上げを食らう日々が続いた。ストレス発散のため頻繁に東京の高級クラブ通いをするようになった。高級クラブ通いの資金としてSは厚生年金基金のお金を横領し、1回で数千万円規模の現金を横領するようになっていた。
高級スーツを身に着け、ブランド品腕時計をしてクラブに通い、ホステス達には札びらを振舞っていた。馴染のママには銀座に店を出させてやり、開店資金1億円は横領したお金であった。
横領の発覚
2010年8月、保険会社から厚生年金基金に対して保険料の支払い滞納の連絡が入り横領が発覚した。厚生年金基金の調査で2005年から回数43回、横領金額総額23億8,334万円が発覚した。同年9月、厚生年金基金は警察に被害届を提出した。
Sは発覚と同時にタイへ出国して逃亡した。3年間の逃亡の末、2013年11月、タイ警察によって身柄を拘束され日本に送還された。2014年6月、Sに対して長野地方裁判所は懲役15年、追徴金430万円の判決を言い渡した。
また、資産運用を任された東京のファンド投資会社は資産運用に失敗し、厚生年金基金の資産は364億円から79億円に目減りしてしまい、間もなく厚生年金基金は解散することとなった。