山形明倫中マット死事件

事件

事件発生

平成5年1月13日、山形県新庄市の明倫中学校1年生の児玉有平君が夜になっても家に帰らず、父親が心当たりを探していた。学校にも連絡して教師たちが学校内を探していたところ、午後8時頃体育用具室の中でマットが巻かれて立てられており、マットの上部から足が二本突き出ているのを発見した。マットの中の児玉君は顔などに蚯蚓腫れがあり、頭蓋骨は骨折していた。死因は窒息死であった。

児玉君の父親は都会からの移住者であり、児玉君は新庄市生まれであるが普段の会話は標準語であったためいじめの対象となっていた。事件当日午後4時頃、児玉君が体育用具室でいじめグループに殴られたり蹴られたりしているのが目撃されている。

犯人の逮捕

警察は生徒への聞き込みを実施し、1月18日体育用具室で児玉君に対して殴る蹴るの暴行を加えていた少年グループのうち、A、B、Cを逮捕し、13歳以下のD、E、F、Gを補導した。逮捕・補導された少年7人は当初児玉君に暴行を加えマットに頭から押し込んだ、と犯行を認めていた。

その後少年たちの親が弁護士を雇い、弁護士が少年鑑別所で少年たちと面会した後から少年たちは否認に転じた。Gは犯行を認めていたが、あとの6人はアリバイを主張して、犯行時現場にいなかったなどと申し立てた。

少年審判

2月10日、山形家庭裁判所でBとCの審判が始まり、BとCは犯行を否認した。2月12日、Aの審判も始まりAも犯行を否認した。2月23日、家裁はA、B、Cに対して観護措置の取り消しを決定した。取り消し理由は、状況証拠のみであり確たる証拠がなく、少年3人の犯罪事実を認定できないというものであった。少年3人は少年鑑別所を退所し学校に復帰した。

刑事補償

8月23日、山形家庭裁判所は少年3人について不処分の決定(刑事事件の無罪に相当)をした。そのため、1月18日から2月23日まで警察や少年鑑別所で身柄拘束された刑事補償金1人あたり29万6,000円が支払われた。

保護処分

13歳以下であった4人の少年について、家裁は少年院送致や教護院送致としていたが、G以外の3人は仙台高等裁判所に抗告した。11月30日、仙台高裁は3人の抗告を棄却し、3人のアリバイを否定したのみならずA、B、Cまでもアリバイを否定して7人全員の有罪を認定した。

弁護士は、仙台高裁に対して審判の対象は4人の少年のみであり、対象外のA、B、Cの有罪認定は無効である、との再抗告をしたが棄却された。

損害賠償訴訟

児玉君の遺族は平成7年、山形地方裁判所に少年7人と新庄市を相手に1憶9,300万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。地裁は、少年らの攻撃と児玉君の死は関連が認められない、として請求を退けた。

平成16年、控訴審で仙台高等裁判所は少年7人に対して5,760万円の賠償を命じた。しかし、少年7人は賠償に応じることはなく謝罪すらしなかった。

損害賠償の時効が平成27年9月に迫っており、児玉君の遺族は少年のうち4人に対して給料差し押さえの措置を取り、時効引き延ばしの裁判を起こした。平成28年、仙台高裁は改めて少年らに対して賠償金支払いを命じた。

少年7人のうち5人が結婚しており、うち3人が子どもに恵まれている。児玉君の父親は、「少年たちも子供を持って、子供を亡くした私の気持ちが判ってくれれば良い」と語っているそうだ。

教師たちのその後

事件の2か月後の3月9日、校長は管理責任を問われ20日間の停職処分を受け、少年審判中に退職した。教頭とAのクラブ顧問も異動により転出した。担任教諭は別の県で教壇に立つことになるなど、多くの教師が異動した。

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