ヨハン・セバスティアン・バッハの音楽

芸術

ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)はドイツの作曲家である。組曲、協奏曲、器楽曲、バイオリン独奏曲など多彩な形式の曲を作曲している。現代の多彩な音楽形式はバッハに始まっており、作曲した曲は2,000曲近くになっている。バッハの曲はすべて通し番号がつけられており、BWV(バッハ作品番号)で識別されている。

ブランデンブルク協奏曲

BWV1046からBWV1051までの6曲はブランデンブルク協奏曲で、第1番から第6番までの組曲である。同じようなメロディーが繰り返されるが、バイオリン、フルート、チェンバロ、オーボエなどが目まぐるしく主役になったり脇役になったりしながら曲が進行し、さながら楽器の共演という趣である。通奏低音という役目をもつことが多いチェンバロが第5番で延々と10分近い独奏をするパートがあり、チェンバロの魅力に気づかされた。

平均律クラヴィア曲集

平均律クラヴィア曲集(BWV846~BWV893)はクラヴィア(鍵盤楽器)のための独奏曲である。第1番ハ長調、第2番ハ短調、第3番嬰ハ長調、第4番嬰ハ短調と続く全48曲のクラヴィア曲集である。現代はピアノで演奏されるが、稀にチェンバロで演奏する演奏家もいる。バッハのクラヴィア曲集全48曲はピアニストにとっての旧約聖書と言われている。ピアニストの新訳聖書はベートーベンのピアノソナタ全32曲である。

無伴奏バイオリンソナタ・パルティータ

無伴奏バイオリンソナタ3曲(BWV1001、BWV1003、BWV1005)と無伴奏バイオリンパルティータ3曲(BWV1002、BWV1004、BWV1006)から成る。バイオリンの独奏で演奏される曲であり、深い解釈と卓越した演奏技術が要求される6曲である。バイオリンパルティータ第2番第4曲シャコンヌは有名な曲であり、この曲単独で演奏されることが多い。

無伴奏チェロソナタ

無伴奏チェロソナタ(BWV1007~BWV1012)はチェリストにとって経典である。チェロで最も演奏される曲はサンサーンスの白鳥であるが、それに劣らずバッハの無伴奏チェロソナタは頻繁に演奏されている。第1番から第6番までの重厚なチェロの響きはバッハの目指した神や宇宙を表している。

クラヴィア協奏曲

BWV1052からBWV1058までの7曲はクラヴィア協奏曲である。現代はピアノで演奏されるが、バッハの頃はチェンバロで演奏されていた。流麗なクラヴィアの流れに乗ってオーケストラが脇を固め、静謐なパートとアップテンポのパートが交互に絡まるように聞く者に訴える。クラヴィアの特性がよく生かされた珠玉の7作品である。

管弦楽組曲

管弦楽組曲(BWV1066~BWV1069)は現代の交響曲形式の組曲である。バッハの組曲は小規模のオーケストラで演奏するスタイルであり、後にモーツァルト、ベートーベンらによって交響曲としての音楽ジャンルが確立した。

管弦楽組曲第3番第2曲「アリア」は美しい曲で、ドイツのバイオリニスト アウグスト・ウィルヘルミがピアノ伴奏付きのバイオリン独奏曲に編曲して、「G線上のアリア」と題して発表した。その後、多数のバイオリニストや交響楽団が「G線上のアリア」を頻繁に演奏するようになった。

オルガン曲

BWV500番台には多数のオルガン曲がある。バッハの初期の作品の中ではオルガン曲に名曲が多い。日曜日の教会に集まった人々が神に祈りを捧げる際、教会で流すのがバッハの作曲したオルガン曲であり、有名な曲では「トッカータとフーガ二短調(BWV565)」がある。このオルガン曲は世界中で頻繁に演奏されている。

カンタータ

神に祈りを捧げる人々が、神に捧げる歌として合唱するのがカンタータである。バッハはカンタータを多数作曲している。神の到着を待ち望む人々が祈りを捧げながら、弦やオーボエの伴奏でカンタータを合唱する荘厳な曲が多い。中でも、「カンタータ第147番(主よ人の望みの喜びよ)」は合唱だけでなく、オーケストラやクラヴィアなどに編曲されて演奏されている。

リュート曲

リュートはバッハの時代のギターの原形となる楽器である。バッハは4曲のリュート組曲を作曲している。リュート組曲第1番(BWV996)、リュート組曲第2番(BWV997)、リュート組曲第3番(BWV995)、リュート組曲第4番(BWV1006a)である。バッハの時代は琵琶のような音色のリュートで演奏されていたため、現代のギターのような音色とはまた違った演奏であった。リュート組曲はリュートの独奏曲であり、現代のギタリストにとっても宝である。

その他に、プレリュード・フーガ・アレグロ(BWV998)、プレリュード(BWV999)、フーガ(BWV1000)のリュート曲がある。

バッハ一族

バッハは2度の結婚で11男9女の20人の子供を授かっている。そのうち4人が大作曲家となっている。最初の妻マリア・バルバラ・バッハとの間に生まれたヴィルヘルム・フリーデマン・バッハとカール・フィリップ・エマニュエル・バッハ、2番目の妻アンナ・マグダレーナ・バッハとの間に生まれたヨハン・クリストフ・フリードリッヒ・バッハとヨハン・クリスティアン・バッハの4人である。子供達は名前で呼ばれ、ヨハン・セバスティアン・バッハは子供達と区別して「大バッハ」と称されている。

バッハは音楽の父と称され、現代音楽はバッハから始まっている。生涯2,000もの曲を作曲して、そのいずれもが名曲である。後世のモーツァルトやベートーベンに影響を与え、音楽の世界に大きな足跡を残した偉人である。

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