父の不倫
主人公の父(田中哲司)は不倫していた。不倫相手(永作博美)を妊娠させ、中絶させたことがある。中絶手術が原因で不倫相手は子供が埋めない体となった。主人公の母(森口瑤子)に不倫が知られ、母が不倫相手の自宅に押し掛けた。その際、母は妊娠中のお腹を突き出し、不倫相手に「子供の生めない、がらんどうの女」と中傷の言葉を叩きつけた。
誘拐
主人公の母は出産し、主人公は4カ月となっていた。雨の日、不倫相手は主人公宅を遠くから見ていて、父母が外出するのを見た。主人公宅に忍び込んだところ、主人公だけが家の中にいた。4カ月の主人公を見て不倫相手は主人公を抱き、家の外に連れ出し誘拐した。
エンジェルハウス
主人公を抱えて不倫相手は、友人の家やカプセルホテルを泊まり歩き、エンジェルハウスという駆け込み寺に落ち着いた。エンジェルハウスでは夫のDVから逃れた母子や訳ありの母子が集団で暮らしていた。不倫相手は妊娠した時、子供につける予定であった「かおる」という名前で主人公を呼んでいた。

エンジェルハウスは高い塀に囲まれて、外部の人間が容易に入れない構造となっていた。住人達は敷地内の畑で野菜を育てたりなどして自給自足の生活を営んでいた。主人公親子はエンジェルハウスで4年近い年月を過ごした。
不倫相手が誘拐犯であるとエンジェルハウスの人達に知られて、主人公親子はエンジェルハウスを逃げ出した。その際、仲良くしていた女性から手紙を託された。手紙には女性の実家の小豆島の住所と「実家の両親に私は元気だと伝えて貰いたい」と書かれていた。
小豆島
主人公親子は小豆島に来ていた。仲良しの女性の実家で女性の両親に娘の消息を伝え、両親の営む素麺製造の仕事をして働くこととなった。貸家で主人公親子は平穏な生活を送った。休日は自転車で海岸や名所旧跡を巡り、おいしい料理を食べたりして過ごした。

竹の先に松明を灯して町内を練り歩くお祭りに参加して、主人公親子は宵のひとときを町内の人々と楽しく過ごした。翌日の新聞に主人公親子が大きく写真入りで写っていた。その新聞は全国紙で、全国に自分達が小豆島にいることが知られたため引っ越すこととした。フェリー乗り場で警察の張り込みに遭い、主人公は警察に保護されて不倫相手は誘拐罪で逮捕された。
両親との生活
主人公は実の両親の元に返って来た。生後4カ月から4歳まで一緒に育った不倫相手を実の母親だと思っている主人公は、両親に対して自分を母親から引き離した悪い男女だと思っていた。主人公は両親との生活に馴染めず、母は主人公に対する愛情が次第に薄れて行った。
父は誘拐事件発生時、不倫相手に子供を誘拐された哀れな男としてマスコミに騒がれ、父母の夫婦関係は冷めきっていた。母はパートばかりに出掛け殆ど家におらず、主人公はレトルトの食事や冷凍食品ばかりで育った。誕生祝や休日の旅行などは一切なく、家庭の温もりを知らないまま大学生となった。
大学生活
大学生となった主人公(井上真央)はアパート暮らしをしながら大学に通ったり、アルバイトして学費や生活費を稼いでいた。交際している男性がおり、妻子ある男性との不倫であった。主人公はその男性との子供を妊娠していた。交際している男性の家族に迷惑はかけられないと思い、男性に別れを告げた。
フリーライターの女性が主人公に接触して来た。フリーライターは主人公の誘拐のことやその後の人生のことを書いてみたいと思っていた。実は、フリーライターは幼少期にエンジェルハウスで主人公と一緒に暮らしていたのだった。フリーライターとの会話の中で蝉の話になり、蝉は7日間しか生きられないが8日目に生きている蝉は誰も見たことがない景色を見れる、とフリーライターは言った。フリーライターは男性恐怖症で結婚などは考えられないが、母親にはなりたいと思っていた。主人公の子供を一緒に育てようと考えていた。
遍歴
主人公の育った場所を巡ってみようとフリーライターに提案され、2人はエンジェルハウスの場所へ向かった。エンジェルハウスは廃墟となっており、瓦礫とゴミの山であった。主人公は微かな記憶があるエンジェルハウスの廃墟で、親子で過ごした記憶を辿った。

そして小豆島に向かった。素麺製造工場は廃墟となっており、親子で暮らした貸家も廃墟となっていた。親子で巡った海岸や公園などを見て回り、逮捕される直前に写真を撮った写真館で主人公親子の写真を見た。幼児の自分と不倫相手が映った写真を見て、お腹の子を沢山可愛がり愛情を注いで育てようと決心するのであった。
主人公は八日目の蝉である。4か月で誘拐されて誘拐犯を母親と思って育った。4歳から実の両親と暮らしたが、両親については母親を奪った意地悪な男女としか思えず、両親との生活は歯車が合わなかった。誘拐されている間のエンジェルハウスや小豆島で親子で暮らした痕跡を見て、親の愛情や子供に対する愛しさがこみ上げ、両親を許してあげよう、生まれて来る子供を慈しもうと悟った。